般若心経・金剛般若経 六

そもそも実体とは何なのでしょうか。仮に「私」がこの世に「存在」してないければ、此の世の森羅万象は、「存在」しますが、それは、「私」にとっては全く無意味な筈です。それでも「世界」は「私」が「存在」しようがしまいが、実体として「存在」する筈です。

しかし、「私」に関係がない「存在」とは、何なのでしょうか。つまり、この世の現象とは何なのでしょうか。現象は、「私」が「存在」せずとも起きている筈ですが、それでは、「私」が「存在」せずとも起きている現象は、それだけで「存在」していると看做せるのでしょうか。

などと、さまざまな疑問がわいてきます。「およそ物質的現象というものは、全て、実体がないことである。およそ実体がないということは、物質的現象なのである。」という事は、解かるようでいて、何のことかわからない、というのが本当のところです。すまし顔で、「全ては『私』の心次第」などと胃虚栄を張ったところで、この「色即是空。空即是色。」を把捉したことにはまったくなりません。この「色即是空。空即是色。」という言葉は、生者にとっては常に問い付けなければならない此の世の謎です。

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