「空不異色(くうふいしき)。」
読み下し文
「空は色に異ならず。」
現代語訳
「実体がないからこそ、物質的現象で(あり得るので)ある。実体がないからといっても、それは物質的現象を離れてはいない。まくた、物質的現象は、実体がないことを離れて物質現象であるのではない。」
これは、次の文によって差から深く述べられることになります。しかし、前句で、色不異空、と述べ、次に空不異色と述べるこの反歌のような構成は、見事としか言いようがありません。
さて、物質的現象には実体がなく、実体がないからこそ、物質的現象である、とは、何を言っているのでしょうか。つまり、現象と実体とが別物と言っています。これは、何となく解かると思います。これはカントの謂う「物自体」にも通じるものがあるように思いますが、これは、的外れかもしれません。
しかし、人間は、世界認識する時に、現象から実体を類推する事が多いのではないでしょうか。
さて、次は有名は句です。
「色即是空(しきそくぜくう)。空即是色(くうそくぜしき)。」
読み下し文
「色はすなわちこれ空、空はすなわちこれ色なり。」
現代語訳
「 (このようにして、)およそ物質的現象というものは、全て、実体がないことである。およそ実体がないということは、物質的現象なのである。」
この「空即是色。色即是空。」とは余りに有名な句です。しかし、この句を理解するには、紆余曲折の人生を歩まなければ、実際のところ何を言っているのかさっぱりわからないものです。
これは、禅問答のようにも思えますが、しかし、この全て実体がないと言い切るところなど、見事という外ありません。(続く)